有松                                            
1 はじめに
 平成28年(2016)7月、全国111番目の重伝建保存地区として、有松の東海道沿い7.3ヘクタールが「染織町」として選定されました。
 重伝建保存地区とは、「重要伝統的建造物群保存地区」の略語で、文化財保護法に規定されています。市町村が指定した「伝統的建造物群保存地区」のうち、特に価値が高いものとして国が選定したものです。

2 有松の町並み保存と重伝建への道のり
 有松における町並み保存活動は、全国に先駆け昭和48年(1973)から住民によって組織的に取り組まれてきました。
昭和59年(1984)、名古屋市は「町並みの保存に関する基本的な事項を定め、もって住み良い文化的な町づくりに資する」を目的に定められた町並み保存要綱に基づき、有松を「町並み保存地区」に指定しました。しかしその後も年に数軒町家の取り壊しが続きました。有松まちづくりの会は町並み保存には文化財保護法の「伝統的建造物群保存地区」制度の導入しかないと考え、伝建・重伝建推進委員会を設置し、伝建制度導入を話し合ってきました。その結果、平成26年(2014)、地元住民の85%の賛同署名を得て、伝建制度導入の要望書を名古屋市に提出。平成28年(2016)2月、名古屋市は有松を伝建地区に指定し、同時に国に選定するよう申請しました。
 そして同年7月、念願の「重要伝統的建造物群保存地区」の選定が文部科学大臣によって告示されました。

<重伝建保存地区並びに町並み保存地区>
有松

          名古屋市・有松・「伝統的建造物群保存対策調査報告書」(平成27年)に基づき記載

3 有松の伝統的建造物と環境物件について
 1)伝統的建造物(主屋、門、塀、土蔵、書院、茶室、その他の建築物)
 有松の歴史的な町並みを構成する主な建造物は、商家(絞商)を始めとする町屋で、その特徴は、商家の場合主屋を東海道に面して建て、木造、厨子2 階建、切妻・平入形式を基本とし屋根は桟瓦葺です。9間前後の広い間口の主屋が多く、防火対策と合わせて店構えを華美に見せるために漆喰で塗り固めた塗籠造に意匠されたものが多く見られます。明治以降は卸売販売への商形態への変化に伴い、街道に面した開放的な主屋の店構えは、格子をたて込む形式へと改造されていきました。また、軒高は時代が下るほど高くなる傾向がみられ、2階が居間として使用されるようになりました。卯建を設ける主屋も2例見られます。
 主屋の他には商品などを収蔵するための土蔵を主屋の脇ないし背後に設けています。屋根は桟瓦葺、外壁は漆喰で腰部分は海鼠壁とするものが多いです。明治後半には大棟に帯漆喰、鬼瓦に影盛を施すものが見られます。
 富の蓄積を背景に、大規模な商家では、贅を尽くした数寄屋造りの書院座敷や茶室、洋間が見られます。また、屋敷構えの外周に設けられた門や塀は時代も意匠も様々ですが、門は大半が腕木門、塀は腰が下見板張りまたは竪板張りとなっています。
 客人をもてなすための茶室や書院座敷、作業場(釜屋)などを別棟で設けるものもみられます、とくに近世においては主屋背面の座敷に武家を招き入れる構成が必須で、主屋脇に門を開き、背後には庭を配し外周には塀を設ける形式が絞商の屋敷構えの基本となり、明治以降も継承されました。
 町屋以外の伝統的建築物として、寺(祇園寺)、西町山車庫、集会場(西町年行司)があり、共同体としての町の成立を示しています。
 商家以外の比較的小規模な町屋の場合も、主屋を東海道に面して建て、木造、厨子2階建て、切妻・平入形式を基本とし、屋根は桟瓦葺です。なだらかに曲がった東海道に沿って、広大な間口の絞商では切妻・平入形式の主屋や門・塀が建ち、小規模な町家も建ち並んで、全体的に統一感のあるゆったりとした印象の町並みが形成されています。特に西町では連続して建ち並ぶ景観が見られます。

<建築物・門・塀等位置図>
       *番号は拡大地図、表のどちらをクリックしても、写真、説明が見られます。
       *県指定有形文化財は、市指定有形文化財は、国登録有形文化財は、で表示
       *市都市景観重要建築物は「市景観」と略表示
有松

建築物(主屋・祇園寺・集会場・山車庫)

有松

 2)伝統的建造物(石積・石造物)

 有松は丘陵地に位置し、平坦部が少なく、敷地の高さを調整するため盛土や切土が行われ、石積が築かれている場所が多く見られます。特に、東海道と敷地の高さを揃えるために、手越川側の北側部分に大規模な石積が見られます。石積の形式は時代によって異なり、川側への敷地拡張の歴史を今日に伝えています。

石積・石造物・灯籠・石碑

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 3)環境物件

 有松の屋敷地などには樹齢350年を超える樹木や庭園など歴史的な緑が現在も残されており、良好な景観を 保持しています。また、屋敷地の背面には水路が設けられているところもあり、屋敷構えの構成や生活の歴史を 物語る貴重な遺構でもあります。

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